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Must.(それをせずにはいられないこと。)

by 長尾彰

 3月と4月に決まっていた講演と研修の仕事がごっそりとキャンセルされました。

 その場に集った人たちの力を借りるワークショップと違って、講演や研修の仕事をするとき、僕はどうにかしてミメーシス(感染的模倣、理屈ではなく気持ちを動かすこと)を起こそうと躍起になります。

 不特定多数が密閉空間に集まる講演と、特定多数が密閉空間で濃厚接触するような僕の研修プログラムは、文字通りウィルスも情動も感染しやすいのです。

 だから、キャンセルも当然。

 キャンセルされた仕事は「お金がもらえることが決まっている仕事」でした。

 こういう仕事は収入面の不安を解消してくれるんだけど、「対価」に支払われるので喜びよりも責任感とか義務を感じながら当日を過ごします。

90分なら90分、6時間なら6時間、とにかくベストのパフォーマンスをします。

 そういう仕事をしたあとのアンケートには、「元気をもらった」とか「講師に励まされた」って書いてあります。

 そしてそういう仕事をしたあとはぐったりと疲れます。

そんな「パフォーマンス」としての仕事が突如なくなって、ああ困ったな、今すぐどうにかなるものではないけど、これがこのまま続いたらお金のことも心配だなあ、と不安になっていた矢先。

(実は消耗するような仕事が減って隙間の時間が増えたのが嬉しいと思ったのは内緒です)

 突然、とある仕事が決まりました。

 ドラゴンボールが7個そろったくらいのミラクル。

 到底ありえない人の繋がりの中で起きた逆転満塁特大ホームラン。

 それまで昼間でも見えていた死兆星が、今日の昼にはすっかり見えなくなるくらいの物語の始まり。

 

 この仕事は、「パフォーマンス」で1対nの関係性で僕の何かを聴衆に渡すようなものではなくて、クライアントと一緒に創り上げる類いの仕事です。

収入(売上)が見通せるものではないし、むしろ「持ち出し」が多くなるであろう仕事。

 僕もリスクを負いながらそれでもお互いの未来の可能性に賭けて試行錯誤を繰り返すであろう創作活動。

 

 僕はずっと「誰かのしたいことを手伝う」を仕事にしていて、「自分がしたいことが何か」がわからなくなっていました。

 だからこそこの数年、「自分がしたいこと」を探すように色んなことにチャレンジしていました。

 こんなリストをつくってみたりして。

これまでにやってみたいと思ったけどどうせできないしいいや、と見なかったことにしたがやっぱりやりたいことリスト2019

本を出す、作詞してアーティストに提供する、出版社をつくる、学校をつくる、金髪にする、エトセトラ、エトセトラ。

いったい僕は何がしたいんだろう?

自分の仕事って何だろう?

考え込むことが多くなっていました。

 まあ、中々見つからないですよ。

 だってずっと答えを「自分の外側」に求めていたから。

 何かをすれば、何かが見つかるんじゃないかと探し求めていたわけです。

今回のこのお仕事を決めるまでに、クライアントと4時間ぶっ続けでファミレスでお話をしました。

話をしていくうちに、「ああ、そういうことだったんだ。」と光明が差して思わず「ユーリカ!」と叫びたくなるような瞬間がありました。

 そうか、そういうことだったんだ。

 僕は、誰かのしたいことを形にしていくことがしたかったんだ。

 いまさら?

 うん、いまさら。

 高校のバスケ部。

 僕は試合に出られなくてもよくて、試合に出るメンバーがベストを尽くせるように、自分ができることをしたかったとき。

 大学のラクロス部の立ち上げ。

 大西くんが「ラクロス部、やりたいんだ。」って話してくれて、僕はラクロスにまったく興味はなかったけど大西くんが目を輝かせながら「男子ラクロスって、すごく楽しいんだよ!やったことないけど!」って話してくれたとき。

 子どもたちとのキャンプ。

 自分たちで何をするかを決めていい時間に、子どもたちが「テントじゃなくてばらばらの場所で野宿したい」って恐る恐る話してくれたとき。

 就職した会社での大掛かりなイベント。

 部長が「台湾の天燈、日本でやりたいんだ。あれはすげえぞ、あんなきれいなものはないぞ」って酔っ払いながら話してくれたとき。

 プロジェクト結の初期。

 石巻の人たちが「こういうことをしたい、本当はこういう助けがほしい。」って打ち明けてくれた時。

 色んな会社でエア社員として働くことになったのも、「こんな会社にしたいんだ、こんなチームをつくりたいんだ、こんなことを成し遂げたいんだ」ってそれぞれの社長がそれぞれの希望を僕に話してくれたから。

 そうだ。

 僕がしたいことは、「誰かがしたいことを形にしていくこと」だったんだ。

 外側にはありませんでした。

 ぜんぶ自分の内側にありました。

 これを読んでる人にとっては当たり前のことかもしれません。

でも、僕にとってはようやく見つけられた「本当のこと」です。

ようやく見つかった、僕がしたかったこと。

ようやく見つかった、僕の仕事。

①それがどんなことであれ、やりたくないことをやめて、やりたいことをはじめるのを促す仕事。

②もしやりたいことがないなら見つかるまでいっしょに探す仕事。

③見つかったらその人の前からいなくなる仕事。

 ファミレスで4時間、くだらない話や本質を突く話まで、相手の話を聴きながらじっくりと考えて話をする「対話」を通じて見つけられた大切なこと。

あのときの「ユーリカ!」を忘れたくないから、今のうちに言葉に残しておきます。

さあ、やるぞ。

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